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東京高等裁判所 平成6年(ネ)3078号 判決

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

第二  事案の概要

原判決四枚目表一一行目の「債権差押命令」の次に「(請求債権は、右1の公正証書に記載された債権元本の内金であって、第一審相被告ノヴァについては一七〇〇万円、訴外森泉弘及び同岡村幸雄については各三〇〇万円であり、差押債権はいずれも右2の各賃料債権のうち平成三年二月分から右各請求債権の額に満つるまでである。)」を、同裏五、六行目の「債権差押命令」の次に「(請求債権は、右1の公正証書に記載された債権元本の内金であって、三〇〇万円であり、差押債権は右2の賃料債権のうち平成三年三月分から右請求債権の額に満つるまでである。)」を加え、同五枚目表四行目の「同被告が」を「平成五年一月ごろ、控訴人が同年一月七日に」に改め、「乙D一ないし四」の次に「、丙二、三」を加えるほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」欄記載のうち、控訴人と被控訴人に関する部分のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に対する判断

一  第二の二の3のとおり、そこに掲記の各債権差押命令は、継続的給付に係る債権である各賃料債権を、第一審相被告ノヴァ、訴外森泉弘及び同岡村幸雄については平成三年二月分から、同渡邊貴子については同年三月分から、各賃料債権の合計額が第一審相被告ノヴァについては請求債権一七〇〇万円に、訴外森泉弘、同岡村幸雄及び同渡邊貴子については各請求債権三〇〇万円にそれぞれ満つるまで差し押さえる旨のものであるから、右各債権差押命令による差押えの効力は、民事執行法一五一条の規定により、右各請求債権の限度において、右差押命令後に生じた賃料にも及ぶものであることは明らかである。しかも、右差押えの効力が継続中に控訴人が訴外矢野から本件建物の所有権を取得して平成五年一月七日その旨の登記を経由し、訴外矢野の賃貸人たる地位を承継したとして、賃料の支払を求めたことから、第一審相被告ノヴァ、訴外森泉弘、同岡村幸雄及び同渡邊貴子は、それぞれ、債権者を確知することができず、かつ、賃料債権が差押えを受けているとして、第二の二の4のとおり賃料を供託したものであるが、その供託金は、右各請求債権の範囲内のものであることは計算上明らかである。

二  控訴人は、訴外矢野から賃貸人たる地位を承継したとしているのであるが、右一によると、その承継したとする時期は、被控訴人の申立てによって賃料債権につき、債権差押命令が発布されて、第三債務者に対する送達によりその効力が発生し、その効力が継続している間であるところ、賃料債権の差押手続中に賃貸人たる地位の承継があっても、賃料債権差押えとの関係では右承継は無効であって、依然として、賃料債権は従前の賃貸人に帰属しているものとして右差押えの効力が及ぶものと解するのが相当であるから、本件の債権差押命令の効力は、控訴人が賃貸人の地位を承継したとする以後の賃料債権(右一の供託に係る賃料債権を含む。)にも及ぶものといわなくてはならない。

そうすると、差押債権者である被控訴人は、控訴人に対し、本件の供託金の還付請求権が自己に帰属することを主張できるものというほかはない。

第四  結論

以上と同旨の原判決は相当である。

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